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僕が見た夢の話をしよう。
学校へ続く登り坂と、イヌのクロと宝箱ときみが出てくる夢なんだ。
僕はテクテク歩いている。
塀の間の一本道。
テクテクテクテク。
夢だから、石を避けたりつまづいたりしない。
ただ歩いていく。
突然目の前に広がる大きな湖。
ポチャン
羽根のはえた巨大な魚が跳ねる。
僕はぴょーーんとひとっ跳びに湖を飛び越える。
その僕のかかとの後ろをドラゴンに乗って、人気アニメのヒーローが横切っていく。
湖を越えてまた道を行く。
右側は広い草原。左側は高い壁。
草原の向こうの方に白い羊の群。
ちょっと心惹かれて草原に踏み込む。
あ、草原じゃなくて野球のグラウンドだぁ。
練習に行かなきゃ、僕だけ遅刻・・・。
グラウンドの隅に立ちつくす。
ユニフォームも持ってない、今日はさぼって帰っちゃえ・・・。
僕は布団にもぐり込む。
そしたらそこにクロがいた。
クロがしっぽを振ってシャツを引っ張るから、僕はまた歩き始めた。
クロと一緒に。
道はいつのまにかズンズン登り坂。
空に向かって延びる道。
この向こうはガケになって世界の終わりだよ。
アラームが僕の中でジリリリリと鳴る。
登り切った道の向こう側が見えないもの、ダメダメ。
クロに誘われたってこの先には進めないんだ。
だからまた、僕は布団にもぐり込む。
「宝物に会いに行きましょ」
お伽話に出てくる妖精がベット横のスタンドに腰掛けて言った。
「空を飛べるなら・・・」僕は願う。
ああまたこの坂道なんだね。
帰ろう・・・、そう思うけど足は坂を上がるのをやめない。
てっぺんに立つと、その向こうに大きく灰色の積乱雲がゴロゴロ言っている。
耳を澄ますといろんな音、これはいろんな声。
はしゃぐ声や歓声も、脅すような低い声も。
やめて、心が掻き乱される騒音。
「ほんとは仲間に入りたいんでしょ?」
そう囁いたのは誰? 妖精? 壁に掛かったパズルのイルカ?
違うよ、無理だよ、あんなバラバラの声の中でどうしたらいいかわからないんだ。
「だから宝箱をあげるの」
妖精がそう言ってポンっと弾けて小さな宝箱に変わった。
ズボンをクイクイと引っ張って、僕を見上げるクロの首輪に光る小さな鍵。
僕は鍵を手にして宝箱を開けた。
一番好きなメロディーが流れる。
『さあ一緒に行こう。いつだって僕はきみの味方だから』
目を覚まし、今鳴りやんだ携帯を手に取る。
−−−受信メール有り−−−
あぁ、きみが居てくれるなら
僕もそろそろ前に進まなきゃいけないね。
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