僕も飼い主 編

1    ぶれいく☆ (2004/08/23)
 
ただいま。
私のかわいいチャンス。
かわいいかわいいかわいい。
彼女の寝顔がそれだけで私の笑顔の素であり
大切に感じ、幸せに思える。
ありきたりな表現かもしれないけど、それ以上に言葉を知らないから、
私は眠る彼女を起こさないように眺めて
「大好き」
と微笑む。
 
 

2    AM1:30 帰り道 (2004/08/04)
 
動物の死を私につきつけないで
自分が壊れそうになる───。
 
その日、自転車での帰り道、ネコが車に牽かれていた。
「死んでる…」
直感的にそう思ったが人通りもなく、目が離せなくて自転車を止めた。
近寄り、暗がりなりに血の跡がわかり、
死を確かめるようにキレイな横腹に触れた。
 
少しカタイ体が死を語り、だからせめてこれ以上ネコが壊れないように
道の端へネコを運ぼうと思った。
 
体はグニャリと曲がり、生暖かく、血が指先にからむ。
「生きてる?」
もう一度横腹に触れ、自分の指先が脈打つのがうるさくて、
手をネコの足の下にずらし股動脈をさぐる。
同時に私は病院にまだ残ってた先生の顔を浮かべる。
「ばかだ、救急を受けられないうちの病院で、交通事故のノラネコにできることなど何もない」
股動脈も…、ない。
ごめん、私なんにもできないや。
 
自転車の帰り道、グリップに触れないよう浮かした指先の血が乾くには
ちょっと時間が必要で、学校で見る血と全然違って不安で怖くて切なくて、
歯を食いしばったけど少し泣いた。
だって指先はまだ少し生暖かかった。
心壊れる、ごめん、私なんにもできないよ。
 
悪いことしてない。
でも、何に向かってなんだろう、私は自転車をこぎながら
「ごめんごめんごめん」
と繰り返し心の中で手を併せた。
 
 

3    発掘 (2004/06/30)
2001/11/25の詩。
ちょっと良かったので掘り出してみましたm(_ _)m
 
いつもどおり。
 
いつもどおりの今日。
いつもどおりの光。
いつもどおりの陽射し。
いつもどおりの命。
いつもどおりだと思い、目を離してはいけない。
その隙に「いつもどおり」は逃げてしまうから。
 
いつもの中の瞬間に新しい輝きを。
たゆまぬ慈しみを。
暖かな命の流れを感じよう、与えよう。
大切な命のために。
 
当たり前だったことが変わるとき、
当たり前だったものが消えるとき、
そこに前兆があると思ってはいけない。
「小さな変化を見逃さず・・・」
口で言うのはたやすいけれど、
それは誰もが喪失の後に気付くこと。
そして時とともにまた忘れゆくこと。
 
いつかは死ぬのだと知らなかったあの日々。
死の訪れを知ったそのとき。
死の存在を見失っている今日。
当たり前に過ぎゆく今日。
その中でほんの少しずつ、見失ってはいけないものを探す。
当たり前の中の命の光を探す。
それがいつもどおりの今日になれ。
 
 

4    感情のかけはし(2004/05/07)
なんでだか人は人といると「不幸自慢」をしたがるみたいで、
「マジしんどぉい」と連呼してみたり、誰かの大変談に「私もさぁ」と身をのりだす。
だけどイヌを抱きながら長々と苦労話してもイヌはちっとも聞いていないから、
イヌを抱いたらただニッコリ笑えばいい気がする。
つらくてイヌを抱く時はワァっと泣いちゃえばいい気がする。
 
 

5    うさぎのこと (2004/04/06)
 
電話口で口をついたように「お母さんのウサギだから」って言った。
その後の母の息を飲む様な音を聞くまで それを疑ったこともなかった。
私にとってはチャメの存在がでかすぎで、あのときの様な深い関係を築けないチャオは
「私たちの」ウサギではあっても「私の」ウサギではないと思っていた。
10年間、私はきっと母がウサギなしには寂しいから飼ったのだろうと思っていて、だから驚いた。
 
私にはすごく頑固なところがあり、
動物であれ物事であれ自分で選んだものでないと執着できないことがよくある。
だからかチャメとチャオに向く感情の種類は大きく異なった。
けれど、お母さんはもともと私を悲しませないために
「代わりのチャメ」を飼い続けてくれたのかもしれない、と、母の想いに初めて近付き、
それでなお、今もやっぱりチャオは母のウサギだったと感じる。
 
チャオ、お母さんとずっといてくれてありがとう。
いつからかその身勝手さも都合よく愛想を振るところも、
私たち「子供」の代わりだったのかもしれない。
そして子供より愛らしく…。
 
お母さんが電話口で「チャオちゃんがね、」と言う。
すると私はどこか安心して耳を傾ける。
それがウサギであっても人であっても、
誰かを心配したり自慢したり 暖かく想っているとき、
そこにはプラスのエネルギーが産まれているように思うから。
だからチャオちゃんありがとう。
ホントは私もゆっくり抱いて泣く時間が欲しかったよ。
 
 



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