「特別じゃない」
2002.夏 チャンスのための絵本から
とくべつじゃない
その仔イヌは最後の一匹で
そんなにあいそも よくなくて
ただ、しっぽが巻ききらないほど長い
ぼくらはいつも一緒に遊んで、
きみはただの やんちゃな仔イヌから
ぼくの心を感じられる親友へと育っていく
でも、
お座りはできても
伏せや待てができるわけでもなく、
ぼくの左にぴったりついて
歩くことも知らない
ボールを投げても、くわえたきり
ぼくの方へは戻ってはこないし、
呼んでも
口笛を吹いても
からかうようにぼくを見ながら逃げ駆けまわる
散歩中は
ぼくのことなんて振りかえらず、
名前を呼んでも振りかえらず
すぐ よそのイヌにケンカを売るし
ひっぱってもなかなか言うこときかない
彼女はただの雑種のイヌだから
人気の小型犬ではないし
かっこいい大型犬でもない
もちろん血統書なんてついてない
自慢のしっぽも
体が大きくなったら普通の長さのしっぽになった
でも そんな普通のイヌが
ぼくは大好きで、大好きで、大好きで、
一緒に星を見たし
一緒に青空と芝生の匂いを嗅いだ
ぼくの涙の味を知っている 唯一のイヌ
ときに散歩をサボったり
立派な飼い主じゃなくて ごめんね
ぼくもきみも全然 特別じゃないけど
ぼくにとって きみは最高に特別だったから
忘れない…
きみの笑顔を抱いて ぼくはずっと歩いていける
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