ここ何週かは毎週、少しずつ手術見学をさせてもらっている。
はじめて手術の手伝いをさせてもらった。
それは「器械係」と呼ばれる仕事で、
オペを行う先生達に横から器具を渡す。
全てのオペに器械係がつくわけじゃないので
そんな仕事があることさえその日に知ったぐらいだった。
オペの助手を努める先輩は2年目の女の人。
患畜のゴールデンの手術前処置を行う前から、その日は風邪で不調を訴えていた。
オペ室で…、
「あやちゃん、器械係やる?」
「え…」
「やってみよう!」
何もわからない私を使うより、他の慣れた先輩に頼む方がスムーズにいくのに…
逆に迷惑をかけそうな懸念に不安を覚えつつ
既に胸はドキドキ高鳴っていた。
オペ前の手洗いからキッチリ教えてもらい、オペが始まり、終わる。
無菌のためにずっと肘から下げれなかった手のダルさも誇らしい。
先輩はにこにこと時々先生と言葉をかわし、私に丁寧に仕事の指示を出す。
そして長時間のオペを終えた。
「縫合は先生お願いしますねぇ☆」
先輩は微笑んで深夜の手術室から出ていった。
アタフタしながら私は縫合を手伝い、迷惑をかけながら片付けを教わった。
先輩がオペ室を出るなり座り込んで動けなくなっていた、
と聞いたのはその後のことだった。
緊張したり疲れたり、風邪気味だったせいもあるのか片付けの後
私自身、腹痛を起こしその日の見学を終えて帰路についた。
帰り道お腹はよじれるように痛みを増し、
家に着くと布団も敷けずに倒れこんだ私は心から先輩を尊敬した。
オペ中どれだけ辛かったんだろう。
通常 助手の先輩達が先生に縫合などをまかせてオペ室を出ることはありえない。
ギリギリのとこで立ってたんだと思う。
そして私に教え、安心させるようにずっと笑っていてくれたから、
私はまた、こんな先生に(先輩に)なろうと思った。
こんな先輩がいるところで勉強できて幸せ。
私でも何かできるなら使ってほしい。
すごくいろんな意味で前進した気がした日だった
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